細胞のバイオメカニクスに関する研究

　近年，細胞内部の応力を計測するツールとして，蛍光物質の間に発生する蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) 現象（図1 ）を利用した張力センサが注目されています．従来のセンサは感度が不十分なことや，蛍光タンパクの波長が一般的でないなどの問題があったため，独自にFRET型張力センサを作製し，細胞質の張力変化が不均質であることなどを明らかにしました．しかし，張力発生に深く関わるストレスファイバ 単体での計測はできておらず，また張力とFRET変化の関係も明らかではありません．そこで，作製したセンサを導入した細胞の個々のストレスファイバに着目し，その伸びや張力とFRET変化の関係を，単離したストレスファイバの引張試験を通じて調べることを目的としました．

　図２はストレスファイバ引張試験の概略図です．ストレスファイバを程浸透圧ショック法により単離し，２本のマイクロピペットの先端に巻き付けるようにしてストレスファイバを把持します．このように把持した状態で2～3µmずつ引張を加え，画像を撮影していきます（図３）．得られた画像からFRET ratio値を計測し，ストレスファイバのひずみやマイクロピペットのたわみを計測することでFRETとひずみの関係やFRETと力の関係を明らかにしていきます．