名古屋大学 大学院工学研究科 機械システム工学専攻/機械・航空宇宙工学科 バイオメカニクス研究室へようこそ!

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細胞のバイオメカニクスに関する研究

ギャップ結合を介した細胞間物質輸送の定量評価と機能解析

 組織の中でも培養環境でも細胞は隣り合うといくつかの形態の細胞間結合を形成しています.ギャップ結合はこれらの細胞間結合の中で唯一空間的に隣接細胞と接続しており,ギャップ結合を介して細胞間で物質の輸送が行われています(細胞間コミュニケーションとも言います).輸送される物質は細胞の機能制御に重要な働きを示すものが多く,個体発生における役割や様々な疾患の原因に関わるものとして多くの研究の対象となっています.本研究では腱細胞を実験モデルとして,細胞間物質輸送の定量評価と機能解析を行っています.これまでに細胞間物質輸送の可視化(Maeda et al., Biomechanics and Modeling in Mechanobiology, 2012)(図1),および拡散方程式を適用して物質移動度の定量評価(Maeda et al., Biochem Biophysic Res Commun, 2015),腱細胞に引張り刺激を作用させた際の細胞間コミュニケーションの制御の解明(Maeda et al., Biochem Biophysic Res Commun, 2017)(図2)などについて研究を発表してきました.さらに,腱細胞に熱刺激を作用させた際の細胞炎症応答の増進にギャップ結合コミュニケーションがどのように関与するかについて,分子生物学手法などを用いて人為的にギャップ結合物質輸送を増減させ,腱細胞機能の変化を調べています.

図1

細胞間物質輸送を可視化したFLIP実験.(a)腱組織内腱細胞の蛍光画像.組織内では腱細胞は数珠繋ぎに配列している.(b)腱細胞間物質輸送を可視化したFLIP実験の様子.(a)の白楕円で囲まれた腱細胞を対象に実施.(c)FLIP実験から得られた蛍光輝度経時変化.この結果からギャップ結合を通過する物質の移動度を算出.(Maeda et al., Biomechanics and Modeling in Mechanobiology, 2012を基に作成)

図2

24時間の静的引張りひずみを負荷した腱細胞を対象にFLIP実験を行い,拡散方程式から求めた細胞間拡散係数(a)および細胞内拡散係数(b).(Maeda et al., Biochem Biophysic Res Commun, 2017を基に作成)