骨・珪藻のバイオメカニクスに関する研究
骨3)骨芽細胞様細胞MC3T3-E1の石灰化促進に関する研究
【研究の背景】
骨は負荷された力学的刺激に適応するように内部構造や外部形状を変化させ,「リモデリング」します.このリモデリングには骨を作る「骨芽細胞」と骨を壊す「破骨細胞」が関与しています.骨は力学的刺激の影響を受け,石灰化することで形成されますが,詳しい石灰化のメカニズムは不明です.本研究では特殊な培養液で培養すると骨芽細胞に変化するMC3T3-E1細胞を用い,石灰化過程に及ぼす力学的刺激の影響を調べています.
このため,MC3T3-E1細胞をシリコーン膜上で培養し,膜を変形させることで細胞に力学刺激を加え,これが石灰化に与える影響を調べます.石灰化の観察には月単位の観察が必要ですが,現状では短期間で細胞が膜から剥がれてしまい,長期培養は困難です.そこで本研究の第一段階として,シリコーン膜上の骨芽細胞様細胞の長期培養法の確立を試みました.
【研究内容】
シリコーン膜への細胞接着を向上させるためには,親水化処理と細胞外マトリクスのコートがあり, シリコーン膜と細胞外マトリクスの接着を強化するには中間層のコートがあります.これらの処理を組み合わせることで6種類のコーティングをシリコーン膜に施しました.以下に各コーティングの略称と組み合わせを示します (Fig. 1).
Fig. 2 は30日間の細胞培養におけるシリコーン膜への接着状態を色で示したものです.各群3個のチャンバで培養を行い,10,15,30日目に細胞を固定・染色し観察を行いました.硫酸による親水化処理は効果が低いためかDay 8 までに細胞がシリコーン膜から剥離しました.一方,E00群 (プラズマエッチング) とEPC群 (プラズマエッチング + Sulfo SANPAH + タイプⅠコラーゲン) では26日間細胞の剥離がなく,30日間の培養でも一部の剥離にとどまる良好な細胞接着を示しました.今後はE00群,EPC群のコートを用いて細胞を接着し,力学刺激負荷実験を行う予定です.