名古屋大学 大学院工学研究科 機械システム工学専攻/機械・航空宇宙工学科 バイオメカニクス研究室へようこそ!

  1. Home
  2. 研究内容

骨・珪藻のバイオメカニクスに関する研究

骨2)力学刺激負荷培養下に置かれた幼若骨組織のリアルタイム観察

【研究の背景】
 これまでの研究では,力学刺激下にて骨内の構造が実際にどのように変化しているのか,リアルタイムに観察した例はほとんど報告されていません.そこで本研究では,幼若な骨組織に力学刺激を負荷しつつ培養し,組織構造の変化をリアルタイム観察する装置を作製し,力学刺激が骨組織の構造変化に与える影響を石灰化の進行割合や方向,コラーゲン線維の配向方向といった観点から検討しています.
【実験装置】
 図2‐1に開発したリアルタイム観察装置を示します.本装置は倒立顕微鏡に設置可能です.ステージヒータとトップヒータで装置内を温め,混合ガスを流入させることで培養環境を作り出しています.骨試料は2枚のステンレス板とバネ蝶番を用いた固定ジグと駆動ジグで把持し,リニアアクチュエータを用いて引張や圧縮などの力学刺激を負荷します.アクチュエータはパーソナルコンピュータにて制御しています.実際の組織像の代表例を図2‐2に示します.観察される組織像は,透過光観察した石灰化領域 (骨) と未石灰化領域 (軟骨) では透過率が異なるため,石灰化領域は暗く,未石灰化領域は明るく見え,両者を区別することが可能です.

図2‐1 骨薄片組織に力学刺激を負荷しながら培養し,内部構造をリアルタイム観察をする装置(市川,2007)

【結果と考察】
 実際の組織像の代表例を図2‐2に示します.観察される組織像は,透過光観察した石灰化領域 (骨) と未石灰化領域 (軟骨) では透過率が異なるため,石灰化領域は暗く,未石灰化領域は明るく見え,両者を区別することが可能です.「力学刺激を負荷した組織」は「静置培養した組織」よりも石灰化領域が広範囲に及んでいることが確認できます.これらの画像から石灰化領域の面積変化を解析した結果,力学刺激を負荷した組織の石灰化領域は培養開始から13時間辺りで急激に上昇し,両者には17時間以降に有意な差が見られました.また石灰化の土台となるコラーゲン線維を偏光顕微鏡で観察したところ,その配向方向と石灰化の進行方向には有意な相関が見られました.以上より引張刺激には石灰化を促進させる効果があること,また石灰化の進行はコラーゲン線維の配向方向に沿って生じることが示唆されます.今後はコラーゲン線維の配向の変化をリアルタイムに観察し,石灰化とコラーゲンの関係性を明らかにし,骨形成のメカニズムを解明していきたいと考えています.

図2‐2 静置培養時(左)と引張負荷培養時(右)での骨薄片組織リアルタイム観察組織像.暗く見える領域がカルシウムの沈着した石灰化領域,明るく見える領域が軟骨からなる未石灰化領域.